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ベトナムのテト(旧正月)の過ごし方・注意点を現地ベトナム人に取材&体験から紹介!
ベトナムにおいて1年で1番盛り上がるイベント、そして、1年で1番長いお休みが「テト(旧正月)」です。もしテト期間中に旅行をするとしたら、どのようなことに注意すればよいか。現地ベトナム人ヒアリング&ベトナム在住者ならではの視点で、ベトナム「テト(旧正月)」の過ごし方、注意点について詳しくご紹介します。
この記事に登場する専門家
ベトナム在住主婦ライター
スイミー
ベトナム「テト(旧正月)」の過ごし方、注意点
はじめまして。ベトナム在住主婦ライターのスイミーです。
日本でも年末年始、特に大晦日や元旦は帰省する人で交通機関は渋滞、ほとんどの飲食店やお店が閉まっていたり、短時間営業をしていることが多いと思います。以前私も大晦日、元旦に一時帰国した際、せっかく日本にいるのに都心のホテルで泣く泣くファーストフード店の食事をしたことがありました。
「もしこれと同じことがベトナムの旅行先で起きてしまったら.‥」考えただけで悲しいですよね。やはりせっかくの旅行は楽しみたいと思います。「テト(旧正月)」期間中の過ごし方、注意点についてベトナム在住者ならでの体験を踏まえご紹介していきます!
新しい暦のはじまり。新年の一大イベント「テト(旧正月)」
テト(旧正月)とは
「春節(旧正月)」と聞くと、中国のことを思い浮かべる方も多いと思いますが、実は、旧正月は中国だけではなく、香港、台湾、韓国、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ブルネイ、モンゴルなど、中国以外にも旧正月を祝う国はたくさんあります。そして、ベトナムもその中の国の一つです。ベトナム人にとって1年で最大の行事、それが「テト(旧正月)」なのです。
テトの約1ヵ月前になると、街角、露店やスーパーマーケットでは、縁起物の飾りやお年玉袋などが売り出され、徐々に歳末ムードになっていきます。
「テト(旧正月)」と呼ばれるお正月は、旧暦では1月中旬頃から遅くても2月中旬頃にあたります。2019年は2月5日、2020年は1月25日が旧暦の元旦です。
ベトナムのテト(旧正月)の過ごし方
さて、1年で1番長いお休みがテトということですが、ベトナムの祝日は日本に比べて非常に少なく、なんと…6日間!しかありません。
私事で恐縮ですが、ベトナムに来て初めてのテトであった2019年2月。つまり、ベトナムに来て初めての長いお休み。どこかへ旅行に行きたいなと思っていたのですが、テト前に引っ越しが重なりベトナムの新居に留まることに…。そんな暇を持て余していた時に、ベトナム人の友人から一通の連絡が…「明日地元に戻るから、私の家に来ない?」「え、いいの?行く!」ということで、旧暦のお正月にベトナム人の友人宅へ伺ってきました。
テトの楽しみ方(食事編)
旧正月ならではの料理
ベトナムの友人宅に伺うと、朝から、女性人がこぞって準備をした料理がテーブルにずらーっと並んでいました。奥にはビールとコーラ、ジュースの山。それぞれグラスに氷を入れて、乾杯のスタンバイです。そうそう、ベトナムでは、冷えたビールではなく、グラスに(縦長の)氷を入れて飲むのが一般的だそうです。では、ベトナムのテトの代表的な料理についてご紹介します。
日本では、おせち料理、お雑煮がお正月に欠かせないもののひとつですが、ベトナムでは、もち米を葉っぱに包んで蒸したちまきが欠かせません。日本のお雑煮が地方でそれぞれ味が違うように、ベトナムのちまきも北と南で違いがあります。
上の写真の四角いものが、主に北部で食べられている「Banh chung(バインチュン)」というちまきです。ゾン(ウコン科)の葉にもち米、豚バラ肉、緑豆を層になるように包み茹でて作ります。
そして、この上の筒型のものが主に南部で食べられている「Banh tet(バインテッ)」というちまきです。同じように、豚バラ肉や緑豆を包んだものと、バナナを砂糖に浸けて赤くしたものがあります。
私の住んでいる地域は南部ですが、友人宅では、「Banh chung(バインチュン)」「Banh tet(バインテッ)」どちらもいただきました。
最初バナナの「Banh tet(バインテッ)」を見た時はこの紅色に驚愕しましたが、ねっとりもちもちした食感が好きな方はいけるかもしれません。
わたしは豚バラ肉が入り、塩気のある「Banh chung(バインチュン)」の方が好きでしたが、南部の人は甘い味付けが好みなようで、バナナのものと豚バラ肉や緑豆で包んだ「Banh tet(バインテッ)」どちらも甘めの味付けが多いそうです。
また、ベトナム人の友人から聞いた話ですが、実は、「Banh chung(バインチュン)」「Banh tet(バインテッ)」ともに普段の食卓にも並ぶそうです。テトの時期に食べるものよりも小さいサイズのものを朝ごはんに食べる家が多いとのことでした。たしかに、以前、ベトナム式のホテルを利用した際、普通の日にも関わらず「Banh tet(バインテッ)」が朝食のビッフェにありました。
さらに、テトに食べる「Banh chung(バインチュン)」「Banh tet(バインテッ)」は大きさが特別なのか…とベトナム人の友人に聞きすすめると、普段はゾン(ウコン科)の葉ではなく、バナナの葉で包むそうで、中の豚バラ肉も油のないものを使用するとのことです。油のジューシーさは贅沢品、特別!とベトナム人の友人が言っていました。
日本でも年末になるに連れおせち料理の準備をしますが、ベトナム人も同じです。大晦日の日に、大人は「Banh tet(バインテッ)」「Banh chung(バインチュン)」をコトコト煮、子供はゾンの葉でバインチュンを包みます。最近では、手間暇かかる「Banh tet」「Banh chung」をお店で注文、購入する人も増えているそうですが、昔ながらのやり方を守る家もあるそうです。別のベトナム人の友人は毎年故郷に帰り、親戚みんなで「Banh tet」を作ることが家族の大切な行事のひとつだと言っていました。
旧正月ならではのお供えもの
そして、食事の配膳ですが、1番初めはご先祖さまのお仏壇、御膳とのことです。新年の前日、旧正月の大晦日の日に新年を祝うため、先祖に祈りを捧げ、お供え物をするそうです。
友人から聞いた話ですが、南部では、お供え物のフルーツは、マンゴー、カスタードアップル、ココナッツ、パパイヤが必須アイテムで、そこに各人の好みで他のフルーツを加えるそうです。必須アイテムのフルーツは4種類ですが、"4"はベトナムでも忌み嫌われるアンラッキーナンバーであるため、盛り付けのお皿の1番下にバナナを置き、その上に他のフルーツを載せてラッキーナンバーの"5"にすると言っていました。
また、このマンゴー、カスタードアップル、ココナッツ、パパイヤの必須アイテムには、「pray for our life enough to live」という意味合いが込められているそうです。 お供え物のフルーツひとつとっても深い意味合いがあることに、「テト(旧正月)」の重要性、特別さを感じました。
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テトの楽しみ方、注意点(レジャー編)
日本人は着物を来て神社へ、ベトナム人は○○○○を着て公園へ。
さて、日本でもお正月に着物を来て初詣に行かれる方もいると思いますが、ベトナム人は、〇〇を着て公園に行きます。〇〇とは…ベトナム人の民族衣装である「アオザイ(Ao dai)」です。
ここで、このアオザイについて1つ注意点があります。私もせっかくのテト期間にアオザイを作ろうと、テトの約2ヵ月前にベトナム人の友人に誘われて生地屋を物色していました。結局決めかね、テトまで約2週間あるし迷っても大丈夫だろうと思っていました。それが、テト約3週間前、当初お願いしようと思っていた仕立て屋に生地を持っていくと、「テト前で注文が多く、今受けても出来上がりはテト後になってしまう!」と断られてしまいました。その後、別の仕立て屋を探し、なんとかテト前にアオザイを仕立てることができたのですが、テトのイベントの大きさを実感した出来事でした。
通常、ベトナム旅行中に仕立て屋でアオザイをオーダーメイトすると、お店に寄りますが、1〜3日で仕上がることが多いと思います。しかし、テト期間中の旅行でアオザイをオーダーメイドする際は注意が必要です。前もってお店に確認した方がいいでしょう。
お年玉事情
日本でもお正月に祖父母・両親から孫、子どもたちへお年玉を渡すと思いますが、ベトナムにも同じ風習があります。私もベトナム人の友人宅に伺った際、(いい大人ですが…笑)友人のお父さまからお年玉をいただきました。
お年玉を渡す対象のだいたいの目安ですが、日本だと親戚などの子どもに限られると思いますが、ベトナムでは広範囲に渡ります。
自分の子ども、親戚の子ども、招かれた家にいる子どもなど、テト期間中に会った子どもが対象となります。
そして、お年玉は大人にも渡すケースがあります。
私が2019年、渡した事例としては、家の警備員さん、庭師さんにお年玉を渡しました。
お年玉の金額ですが、一般的に、赤がラッキーカラーとされるベトナムでは、赤色のお札5万NVND(日本円で約282.2円)がお年玉に最も好まれて使われているとのことで、5万VNDを赤いポチ袋に入れ、それぞれ渡しました。
また、私事で恐縮ですが、引っ越してからメイドさんを雇った関係で、2020年はお年玉をメイドさんにも渡さないといけません。友人にメイドさんのお年玉事情を聞いてみると、ベトナムでは年間の給与額が「13ヵ月分」とされていて、13ヵ月目の給与はテト前の賞与となっており、この賞与がお年玉の代わりとなっていると言っていました。
さらに、テト期間中、ベトナム人の友人とモーニングにレストランへ行った際驚いた出来事が…。ベトナムではチップ文化がないのですが、テトだからかその友人はおつりをチップ代わりにウェイターさんに渡していました。
大人のお年玉は、ボーナスというより、普段お世話になっている方への心づけのようなものなのかもしれません。
チップの代わりということで、その際はお年玉袋は必ずしも必要ではないと思いますが、もしテト期間中に旅行をする方は、お世話になった運転手やガイドさんなどに心づけとして渡すと気持ちよく仕事をしてくれるかもしれません。
テト(旧正月)中のベトナム旅行は楽しめる?
前後1週間は、注意
日本でもGWや年末年始、お正月の大型連休の際には、さまざまな交通機関で渋滞が起きますが、ここベトナムでも同じ現象が起きます。
実際に、年末年始、故郷へ帰省するベトナム人の友人のタイムライン(SNS)は、渋滞している写真で溢れていました。もちろん、(テト期間中以外の)普通の日のラッシュアワーの時間帯にも渋滞は起きますが、テト期間中はさらに渋滞するということを頭に入れ、旅程を考えた方がいいかもしれません。
そして、もう一つ気をつけてほしいのが、お店の営業時間です。
例えば、ホーチミンの大型ショッピングセンターである高島屋も、2019年は旧暦の大晦日〜お正月三が日は休館、その後、4日間は短時間営業、通常営業に戻ったのは次の週からでした。私の友人もテト期間中にホーチミンに旅行した際、訪れたカフェがことごとく閉まっていて、途方に暮れたと言っていました。
Takashimaya Việt Nam
こちらがホーチミン高島屋の現地サイトです。 ベトナム語ですが、見てみてください。
www.takashimaya-vn.com
しかし、ビテクスコフィナンシャルタワーや水上人形劇などの主な観光名所は営業しているそうです。参考までに、上の画像は2019年のテト期間中のビテクスコフィナンシャルタワーの営業時間です。
このように、テト期間中はお店の営業時間、レストランにおいては、お店のメニューにも少し注意した方がいいかもしれません。テト期間に営業していたとしても通常メニューを注文できず、割高になる場合があるということです。実際に、私もテト後の週末にホーチミンにご飯を食べに行った際、まだお正月メニュー中心で、通常メニューがあまり注文できず少し割高でした。お正月も通常営業、通常メニューを提供しているお店もあるので、お店の情報を念入りに確認した方がいいでしょう。
花火とフラワーロード
日本では、除夜の鐘とともに新年が始まるイメージが強いですが、海外では、年明けとともに、花火が打ち上げられる国が多いと思います。ベトナムも新暦の1月1日に新年の花火でお祝いするところもありますが、一部の地域だけで小規模です。しかし、旧暦、旧正月の大晦日の夜は年が明けるとともに、各地で花火が打ち上げられ、盛大に新年が祝われます。
私も2019年はベトナムで旧暦の新年を越したのですが、大晦日から新年の年明けに行われる花火の打ち上げ会場には身動きが取れないほど、多くの人が集まっていました。
そして、ベトナム人はアオザイを着て、公園に行くとお話しましたが、テト期間中、各地の公園ではフラワーロードが出現します。例えば、ホーチミンの中心地、Nguyen Hue(グエンフエ)通りにある歩行者天国では、毎年フラワーロードが開催されベトナム人と観光客の多くの人で賑わいます。また、美しく彩られるのは花だけではなく、その年の干支にちなんだモチーフの人形や飾り付けでデコレーションされるのもテトならではです。ちなみに、2019年は「豚」年でしたので、豚のモチーフでした。(日本の干支では「猪」ですが、ベトナムでは「豚」です。)
ベトナムのテト(旧正月)を体感する旅も
ここまで、「テト(旧正月)」の過ごし方、注意点についてご紹介しましたが、交通機関やお店の営業時間、料理やホテルの値段等を考慮すれば、テト期間中にベトナム旅行をしても十分に楽しめると思います。この旅行に何を求めるか。日本にないテト(旧正月)の文化を味わう旅もまた良いかもしれません。